メンタルトレーニングでバッティングフォームを改善する方法【メンタルローテーションが使える】

少年野球チームの監督さんから次のような質問を受けました。

はてな(男性)

選手本人の頭で考えているバッティング動作のイメージと、実際のスイング動作がまるで違うんです。どうしたらイメージと実際の動作を近づけることができるのでしょうか?

これは、おそらく多くの指導者が、技術指導やフォーム指導をするときに悩む問題の1つではないでしょうか。

今回は、このような問題を解決するヒントを紹介します。

頭の中でイメージするフォームと実際のフォームを一致させる方法は?

結論から言うと「イメージトレーニングを繰り返し行うこと」です。

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ここで言うイメージトレーニングとは、「自分自身のプレーを心の中で想像すること」です。

  • ホームランを打っている自分
  • すばらしい速球を投げている自分
  • コーチに教わった正しいピッチング動作をしっかり行っている自分

そのような自分自身のプレーを、まるで自分の目や動画で見ているかのように鮮明に思い描くことが「イメージトレーニング」です。

≪バッティングのイメージトレーニングの例≫

『大リーグのメンタルトレーニング ベースボールマガジン社』より

「軽々と打った時のこと、場外ホームランを打ったシーンを出来るだけ細かくイメージで再現し、感じます。そのとき相手投手が投げた球がどんなに大きく見えたかを感じ、バットの真芯でボールを捕らえたときの音を聞きます。そして、そのような最高のときに感じる自信を感じます」

このようなトレーニングを繰り返し行うことで、頭の中でイメージするフォームと実際のフォームを一致させることが出来るようになるのですが、そのためには、ちょっとしたコツや練習方法があります。

イメージトレーニングのポイント

まずは、イメージする前に正しいピッチングフォームやバッティングフォームを学んで理解することが大切です。正しいフォームを知らなければ、良いイメージを作ることは出来ません

悪いフォームを繰り返しイメージしていると、当然悪いフォームが身に付いてしまいます。せっかくのイメージトレーニングが逆効果になるので、ここはしっかり注意して行いましょう。

最近は、スマホがあれば世界中の良い選手のフォームをいつでもどこでも見ることが出来ますよね。一流選手のプレーをたくさん見ることも良いイメージトレーニングになります。

たとえば、こんな感じ↓

調べるといくらでも出てきます。

また、イメージトレーニングは、自分がプレーしているかのようなイメージ(一人称イメージ)で行うのか、他の人がプレーしているのを見ているようなイメージ(三人称でイメージ)で行うのかによっても効果が変わってきます。

体操のオリンピック金メダリスト、内村航平選手は「一人称イメージ」がとても優れているそうです。

柔道の谷亮子さんは、体育館の上の方から自分が試合をしている姿を見ているイメージ(三人称イメージ)があると、テレビか何かでおっしゃっていた記憶があります。

野球の場合は、一人称イメージと三人称イメージの両方の視点が持てれば、スキル向上だけではなく、試合での状況判断も鍛えることができます。

その他にも、

  • できるだけ多くの感覚を働かせる(触覚、聴覚、視覚、嗅覚、味覚)
  • できるだけはっきり、詳しくイメージする
  • うまくプレーしているところをイメージする
  • 自分のミスや審判のミスジャッジ、不運なことなどを乗り越えて成功するイメージをする。

こういったこともポイントとして意識してみてくださいね。

メンタルローテーションとは?

心理学の分野では、頭の中で自由に回転する図形が一体何なのかをイメージする「メンタルローテーション」と呼ばれる方法があります。たとえば、次の問題。

 

PTOTSTニュース.blogより引用)

 

このような問題を解いているとき、あなたの脳の中では、「あなた自身の体が、幽体離脱のように空間移動をして、手やギターの絵の周りを回って別の角度から眺めている」ということが起こっています。つまり、頭の中で絵をくるっと回転させているわけではなく、(想像上で)体を移動させているんです。

その時の脳の活動状態を測定すると、実際に運動をしているときに働く部分(運動関連領域)に活動が見られることが分かっています。不思議ですね。

ようするに、メンタルローテーションを行うことは、頭の中で実際に身体を動かしているのと同じことが起こっているということです。

メンタルローテーションの効果

このようなメンタルローテーションを行うと、頭の中のイメージを操作する能力が向上し、頭の中の理想的なフォームと実際のフォームを近づけられるようになります。

  • 投げるときにひじが下がる
  • バットスイングのときにあごが上を向きすぎている
  • リリースポイントが安定しない
  • バットの芯にうまく当たらない
  • 開きが早い

そんな問題を抱えている選手は、取り組む価値がありますね。

メンタルローテーションの例題(3問)用意しました


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『メンタルローテーション“回転脳”をつくる(池谷裕二著)』から、問題を3つ引用してみましたので、試してください。(答えは下の方にあります)

①【漢字復元】バラバラのピースを組み合わせて、漢字一文字を復元してください。同じアルファベットの辺同士をぴったりとくっつけます。ピースは回転させてもいいですが、裏返してはいけません。出来上がる漢字は何でしょう?

②森の動物たちの様子を表したイラストです。このイラストを後ろから見た絵はどれでしょう?

③いろいろなマークが各面に書いてあるブロックを、角度を変えて見ました。
?のところにはどんな形のマークがあるでしょうか?

答え

① 円
② イ
③ エ

まとめ

メンタルローテーション、メンタルトレーニングは、イメージの中の理想的な動作と実際の動作を近づける練習の助けになります。また、障害予防にも役立つ可能性もあります。さらに、思考力、論理力、算術力、問題解決力、ユーモアを理解する力、頭の良さなど、様々な能力アップ効果が期待できます。イメトレの達人を目指してみてはいかがでしょうか?

【動画】メンタルローテーションの練習にどうぞ。

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メンタルローテーションが練習できるような動画を作ってみました。本格的なトレーニング方法とは異なりますが、効果はあると思います。 楽しみながらやってみてください!

 

【参考文献】

  • 池谷裕二/メンタルローテーション“回転脳”をつくる/扶桑社BOOKS・2019
  • 大リーグのメンタルトレーニング/ベースボールマガジン社
  • PTOTSTニュース.blog
  • 金子文成/運動イメージの脳内再生トレーニングとパフォーマンス健康な被験者でのトレーニング効果/臨床スポーツ医学・2017
  • 田中睦英/手の心的回転課題と運動イメージ明瞭度およびワーキングメモリの関連/2015
  • 木下玲子/スポーツ選手のメンタルローテーション能力に及ぼすトレーニングの影響/順天堂大学スポーツ健康科学研究・2003
  • 山田実/運動イメージ想起能力とハムストリングス肉離れ発症との関係/臨床スポーツ医学・2009
  • 水口暢章/運動イメージと運動パフォーマンス/計測と制御・2017