投球障害(野球肩・野球肘)の原因となる投球フォームになっていませんか?【メディカルチェック@沖縄】

投球フォームを分解してチェックしよう!

良い投球フォームとは、どのようなフォームでしょうか?

選手それぞれにフォームの個性があることは素晴らしいことです。でも、最も大切なことは「ケガをしないこと」「ケガをしにくい投げ方で投げること」ではないでしょうか。どんなに速いボールが投げられたとしても、肩やひじを故障してしまっては、元も子もありませんよね。

今回は、ケガをしやすい投球フォームになっていないかどうかをチェックするときのポイントとして「5つの投球フェーズ(投球相)」を紹介したいと思います。

投球フォームを分解する(投球フェーズに分ける)

下図の投球動作を見ると、下半身から上半身まで、とても多くの動きが行っていることが分かります。投球フォームを分析するとき、このすべての動きを把握することはとても難しいですね。

ですが、投球フォームをいくつかのチェックポイントに分解して見ることで、より簡単に分析をすることが出来るようになります。図1の黄色で囲われた写真が、そのチェックすべきポイント(投球フェーズ)となります。

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一般的に「投球フェーズ」は以下の5つに分けられます。

投球フェーズ(投球相)
  • ワインドアップ期
  • アーリーコッキング期
  • レイトコッキング期
  • 加速期(ボールリリース期)
  • フォロースルー期

    次の2つの図は、投球動作を5つのフェーズで切り取った写真です。

    横から

    前後から

    投球フェーズでチェックすべきポイント

    それぞれの投球フェーズで「チェックすべきポイント」と「良くないフォームの例」を紹介します。(右投げ選手の場合で説明します)

    1.ワインドアップ期

    左脚をあげ、片脚立ちになるまで。

    【チェックする項目】

    • 脚を上げたときの姿勢(骨盤、体幹の傾き)
    • バランス(重心の位置)

    【良くないフォームの例】

    • 片脚立ちが不安定(骨盤の後傾、体幹・重心が後ろ過ぎ)
    • 骨盤が後傾し、腰椎が屈曲している
    • 右股関節の曲がり(屈曲)が不十分

    不安定な片脚立ち

    右股関節屈曲が不十分

    体幹が後方に傾いている7

    2.アーリーコッキング期

    前に出した左脚が着地するまで。右ひじが上がってきます。

    【チェックする項目】

    • 脚をまっすぐに踏み出しているか
    • 体が早く開いていないか
    • ひじを引きすぎていないか
    • ボールと頭の距離が離れすぎていないか

    【良くないフォームの例】

    • 踏み出した足がインステップまたはアウトステップしている
    • 着地時点で、すでに体が開いている(胸が相手方向に向くのが早い)。いわゆる「割れ」ができていない
    • ひじを引きすぎている(肩関節の過剰な水平外転)
    • ひじが十分に曲がっておらず、ボールを持つ手が頭から離れすぎている
    • 投球側のヒザが内側に向きすぎ・外側に向きすぎ(股関節内旋・外旋)

    インステップ

    アウトステップ

    体幹の早い開き

    ひじの引きすぎ・ボールと頭の距離が遠い

    股関節内旋

    股関節外旋

    3.レイトコッキング期

    体をひねり右肘が投球方向に向く瞬間。肩が大きくひねられ(外旋)、ボールを持った手が頭の後ろに残されている瞬間です。

    【チェックする項目】

    • 胸が張れているか
    • ひじが下がっていないか(肩-肩-ひじのラインが一直線になっているか)
    • 肩関節が十分外旋し、シングル・プレーン(図15)で投げられているか
    【シングル・プレーンとは】

    十分な肩の外旋によって腕の振りとひじの伸びる方向が一致し、ひじの後ろにボールが隠れて見えなくなる投げ方。肩やひじに負担が少ない。

    シングルプレーン

    【良くないフォームの例】

    • 胸が張れていない
    • 肩甲骨の動きが硬い
    • ひじが下がり過ぎ、上がり過ぎ

    肘下がり

    ひじが上がり過ぎ

    4.加速期(ボールリリース期)

    振られた腕が加速しながら、ボールが指先から離れる瞬間です。

    【チェックする項目】

    • ゼロポジションでリリースできているか(図19)
    • シングル・プレーンで投げられているか(内旋投げになっていないか)
    • ひじが下がっていないか(肩-肩-ひじのラインが一直線か)
    • ヒザが投げる方向にまっすぐ向いているか
    【ゼロポジションとは】

    上腕骨の長軸と肩甲棘の長軸が一致するポジション。肩を肩甲骨面上で約130°~150°上げた位置。肩関節周囲の筋肉のバランスが良く、肩関節が最も安定すると言われています。

    ゼロポジション

    【良くないフォームの例】

    • ゼロポジションで投げられていない(リリースポイントが乱れている)
    • 内旋投げ(ダブル・プレーン)
    • ヒザが外に向きすぎている(ヒザ割れ)

    内旋投げ

    ヒザが外に向きすぎ(ヒザ割れ)

    5.フォロースルー期

    ボールを投げたあと、振られた腕を減速するフェーズです。左足に全体重が移動しています。

    【チェックする項目】

    • 踏み出した足に体重がしっかり乗っているか
    • 体幹(胸椎)、左の股関節が十分に回っているか
    • バランスが不安定ではないか

    【良くないフォームの例】

    • 踏み出し足に体重が乗っていない。(体重移動)
    • 体幹(胸椎)、左の股関節が十分に回っていない
    • バランスが崩れている。(前後左右)

    良い投球フォームを作るには?

    故障しにくい「良い投球フォーム」を作るには、単に投げる動作だけを改善しようとするのではなく、以下のことを意識してトレーニングもしていきましょう。

    良いフォームを作るために・・・
    • 良い姿勢を作る(骨盤の傾き、重心の位置など)
    • 関節の柔軟性を高める(胸まわり、股関節、肩関節など)
    • 筋力をつける(肩まわり、下半身、体幹、インナーマッスル)
    • ゼロポジションでのボールリリース
    • バランス能力の向上
    • 上半身と下半身の連動性の向上

    これらの要素をうまく組み合わせることができれば、より故障しづらくパフォーマンスの高い投球フォームを身に付けることが出来ます。

    自分の投球フォームの動画を撮って分析するのもいいですね

    ご自身の投球フォームが「5つの投球フェーズ」でどのような動きをしているか、動画を撮ってみて分析してみるのも良いかもしれませんね。今回の記事をもとに、「投球フォームのチェック表」を作りました。

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    この資料1枚を見れば、投球フォームを分析するときにチェックすべき重要なポイントが分かるようになっています。

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    【参考文献】

    • 菅谷啓之/肩と肘のスポーツ傷害 診断と治療のテクニック/中外医学社・2012
    • 山口光圀/投球障害のリハビリテーションとリコンディショニング/文光堂・2010
    • 林典雄/肩関節拘縮の評価と運動療法/運動と医学の出版社

     

     佐々岡流 ピッチングの極意~体感速度をアップさせるフォーム作り~

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